母と金魚
うちの店には看板金魚の「金ちゃん」がいる。
母が溺愛して餌をやりすぎなため最近太り気味だ。
「金ちゃんはね~、私が来るとわかるんよ♪すぐ寄ってきてかわいいわぁ~。」と毎日同じ事を言いながら餌を過剰に与えてしまうのだ。
以前、金ちゃんが窮屈そうに立ち泳ぎしてるのを発見した私はそれを母に指摘すると
「病気かも・・・」とひとりあたふたしていた。
私は「狭いだけだと思うよ・・・」と言って帰宅したのだが、
母はその後大きなガラスの容器を買ってきて金ちゃんを移し心配だからと自宅に連れて帰ったらしかった。
その夜、「金ちゃんが見たこともない速さで泳ぎだした!」という報告の電話があったので「よかったね。」と言っておいた・・・。
そもそも小さいガラス容器に金魚藻を山のように入れていた母に原因があるのだが・・・。
それにしても私が風邪をひいた時「熱が38.5度を超えてないなら絶対学校を休んでは駄目!」と恐い顔で言っていたあの人と同一人物とは思えない・・・。
そして先日、私の休みの日に店から電話が入った。母である。
暗く沈み込んだ声で、「朝店に来たら、金ちゃんがお腹を上に向けて浮いてた・・・。」とつぶやく。
「え?死んだの??」と言う私の質問に
「わたしが呼びかけると一生懸命答えて一瞬元に戻るけど・・・またすぐに仰向けになるんよ・・・」と泣きそうな声。
時折「金ちゃん!金ちゃん!!」という悲痛な声が聞こえてくる。
そうか・・・ついにお別れの時がきたのだな・・・と悲しくなったが
母には「立ち泳ぎに次いで背泳ぎもマスターしたんと違う?」とジョー談を言ってとりあえず電話を切った。
さてと・・・冷静に対処法を考えなければ・・・
早速、金魚がひっくり返った時の対処方についてネットで調べてみる。
すると驚くべきことに、金ちゃんは「逆立ち病」というおかしなネーミングの病気であることがわかった!
食べすぎや運動不足で脂肪がつきすぎ、浮き袋の調節機能障害をおこしているらしい・・。
寒くなるとひっくり返りやすくなると書いてある。なるほど・・・
胃腸障害と運動不足が原因らしい・・・。あ~、やっぱりね~。
対処法として、水温を上げて胃腸の働きを活発にすることと胃腸薬を少し与えるとよいとある。
早速母に電話し、「逆立ち病」であることを告げ、水温を上げて胃腸薬を飲ませるよう指示を出した。
案の定母は驚き「魚用の胃腸薬なんかどこで買えばいいの?」と聞いてきた。
「そこの棚の一番上に私の胃腸薬があるから。」と言うと
「え?あんた・・・魚の胃腸薬なんか・・・」と人を半魚人扱いである・・・。
「だから~、人の胃腸薬を少し砕いて餌と一緒にあげればいいの!少しだからね!!」と念を押し電話を置いた。
---- 二時間後、母から電話があり「金ちゃんが元に戻った!」と大変嬉しそうにはしゃいでいた。
「よかったね・・・。」
まったく、人騒がせな母と金魚である・・・。
----- その夜、夕食を食べながら今日の騒動について子供たちに話して聞かせると2人とも大うけしていた。 「逆立ち病」という病名がツボに入ったらしいい。
お腹がいっぱいになった私はヒーターの前でテレビを見ながらいつの間にか眠ってしまった・・・
テレビの音が遠くなり・・・
子供たちの笑い声と話し声がかすかに聞こえてくる・・・
「母さん、絶対逆立ち病やな・・・」
「あっためればたぶん下むくぞ~」
爆笑・・・
bloomへようこそ
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