おじさんと謎の液体
時々、無性に たこ焼き だの お好み焼き だのが食べたくなる。
先日も空腹時に急に食べたくなり
頭の中がいっぱいになった。
考えただけでソースのいい匂いもしてくるようだ。
ふと、半年ほど前に店に現れた不思議なおじさんのことを思い出した・・・。
---- あれはある冬の寒い日。
店で商品のラッピングをしながらふと外を見ると
なにやら一升瓶らしきものを抱えたひとりのおじさんが佇んでいた。
明らかに私を見て微笑んでいる。
私もつられて微笑み、軽く会釈をした。
すると間もなく、そのおじさんが店のドアを開けて店内に入って来た。
開口一番、「ちょっとコップ貸して!」と言うではないか。
おじさんは、戸惑う私にはおかまいなしにどんどん近づいてきて
一升瓶をドンとテーブルの上に乗せた・・・。
よく見ると真っ黒な液体が底のほうに数センチ溜まっていた。
「なんでもいいけん、コップない?」
「は?」
状況を把握できず、頭が真っ白・・・いや真っ黒になった。
とにかく執拗にコップを要求されるので
しぶしぶ店の奥からグラスを取り出してきた。
私の持ってきた華奢なフォルムのお洒落なグラスを見るなり
おじさんは「あ~・・・。」と残念そうな声を出した。
「あ~・・・。って言われても・・・。」と私も言い返す。
次の瞬間、おじさんはテーブルの上の一升瓶の蓋を開け
グラスに真っ黒な液体を注ぎはじめたではないか!
「いいソースが入ったけん、飲んでみてん!」
にこにこ顔でそんな事を言いながら
グラスになみなみとソースらしき液体を注いでゆく・・・。
おじさんはどうしても一升瓶に残ったソースを全部注いでしまいたいようだった。
しかし、私の用意したグラスがまんざら容量がなかった為
グラスの淵まで注いでもまだ残っている。
尚も注いだため、ソースが表面張力いっぱいになった・・・。
私はおじさんにグラスを渡したことを思いっきり後悔したが後の祭りである。
「まあ、一口飲んでみてん!」と満面の笑みで言われたが
グラスを持っただけでソースがこぼれるのは目に見えていた・・・。
「ぜったい美味しいけん。遠慮せんでいい!」
私はその時まで、ソースが飲み物であることを知らずに生きてきた・・・。
「余ったら色んなもんにかけてみてん。絶対美味しいで!」
店中にソースの香りが充満しはじめた・・・。
「あの・・・。今おなかいっぱいなんで後でいただきます!」
苦し紛れに言うと
おじさんはちょっと残念そうに「ホント、美味しいんで!」と言いながら
「おたふく」と書いたラベルの一升瓶片手に店を出て行った・・・。
---- おじさんが立ち去った後、
表面が丸く盛り上がったソースのグラスを見つめ
どうしたものか死ぬほど悩んだ私である・・・。
bloomへようこそ
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